Monthly Archives: June 2011

20 Jun 2011    夢から醒めた夢

久々の更新です。
半年以上も書いていなかったワケは長くなるので割愛させてもらうとして、
職場が移って現在のバイト先での話。
認知の進んだ利用者さんと接しているほうが、
普通っぽい方より気が楽というか、
クリアな利用者さんだと正直、何を話していいのかわかりません。
姑からの酷いいじめに耐え抜いた話、戦争や貧困で苦しんだ話、
またその人でしか為しえなかったであろう特殊な体験談談などなど、
どの利用者さんもいろいろ話を聞いてみると、
小説より奇なりなことが多い。
「本にできるんじゃないか!?」
そう思えるくらい昔の人は今の人より
人生経験の密度が濃いな~と思うことがしばしばあります。
しかし、それはそれ。
言ってしまえば、過去の話です。
今現在起こっていることのほうが興味が惹かれる性質なのもあり、
殴られたって罵られたってツバを吐かれ糞を投げつけられても、
いまこの瞬間に非日常を経験させていただけるほうがおもろいのです。
職場が移ってもそんな病み付き具合ですので、
好きになる利用者さんは一癖も二癖もある方と相成ります。
その彼女は、戦後の経済成長期にはすでに、
高級スポーツカーを乗り回す社長夫人であり、
指輪とネックレスはゴールドが好きだったとのこと。
その後、独居での車椅子生活になり生活保護も受けられ、
現在は要介護の度合いも高くなり入所されたのですが、
まだお若いこともあり、口も達者です。
(でも入れ歯なのでほとんど何を言っているか判別できませんが)
やはりというか、彼女には問題行動という「暴言・暴力行為」があり、
職員に殴りかかっては暴言を浴びせ(しかし何を言っているかわからない)、
他利用者さんからも「うるさい!」など文句を言われた挙句、ふてくされて寝る、
というのが1日の行動パターンなのです。
新人の職員には必ずや彼女からの洗礼を受けるというのが通過儀礼となっており、
しかし物好きな僕ですので洗礼的なものは悦んで受けさせていただきました。
それが功を奏したのか、
なんだか彼女がおとなしくなってきたある日、夜勤の当番でした。
朝の4時。
朝食の下ごしらえを終えてひと段落して仮眠していた頃、
ふと気付くと彼女がふがふがと何か言っている。
ベッドに近づいてなんとか解読してみると、
「お前さん、ベッドに寝ろ」
というのです。
「え!? ベッドに、ですか?」
というとコックリ頷かれます。
「わたしはもう充分眠ったから床に降りる。お前さんはここに寝ろ」
というようなことを言われながら、
なにやら指差す方向に目を向けると、そこには座椅子がありました。
「わたしは座椅子に横になるから」
という意味らしいのです。
そうこうしているうちに隣に寝ていた利用者さんが
もぞもぞと起きてしまわれ、
今度は、
「○○ちゃんの面倒を見てあげなさい」
という意味のジェスチャーをされる。
「あなたが起こしたも同然でしょうに…」と思いながらも
入眠介助をして戻ってくると、
彼女はまだ眠らず、しかと目を見開いている。
僕が寝るまで起きているつもりのようです。
しかも、その目や顔つきはいつもと何かが違いました。
とにかく、引くに引けなくなってしまったので、
「…じゃあ、30分だけ失礼します」とお礼を言い、
床に就かせていただきました。
初めてです。
利用者さんに入眠介助されたのは…。
その話を夜勤明けに早番の職員に話すと、
彼女は以前、僕と同じくらいの年の息子さんを亡くされているとのこと。
彼女は夢から醒めた夢の如く、
母の面持ちで僕のことをその彼と勘違いしていたのかも知れません。

Up To Top of Page