超高度情報化社会には「マニュアル」が不可欠ですが、なぜだかそれを好まぬ性格ゆえ、いにしえのエロ本編集なんぞに憧れ、しかし挙句の果てに当のエロ本業界からマニュアル的にリストラされたわけなのですが、奇しくも転職した先がマニュアルの権化・介護業界でありました。
もちろんカオスな現場をマニュアル的に管理することは必要不可欠だし、整ってないと何も始まらないのも事実です。ですが、これはマニュアル化できないんじゃないか? と最近、思ったことがありました。
またまたオジキの話で申し訳ないのですが、彼は人生の半生以上を「氣」を遣う仕事で成して来た「氣遣いの鬼」のような方なので、本能的にか、その場の空気に行動や発言を合わせることが多いのです。
時に、かしましい女性利用者たちが口やかましく喧嘩をし始めると大人しく机(椅子ではないのがオジキ・オリジナル)に座り込み、喧騒が静まるまで黙って目を瞑っている。現役の頃ならそういった粗相をされた輩には女子ども関係なく一喝したと思われるところなので、僕ら職員や他利用者の「どうか暴れないでください…」という「氣」を彼なりに感じていての「だんまり」なのかな? と思わずにはいられません。
認知症という病は、身体や脳が衰えても感情は鈍麻しないんだそうです。というか、それは、認知症ではない爺さん婆さんだって同じことで、人間のフィジカルとメンタルな面はもちろん別個という証左なのです。その当然を見落とし、彼らの感情までも忙しさにかまけてマニュアル化しようとしていたことが身につまされた今日この頃。
というのは、正午に出勤しオジキに昼メシをマンツーマンで食べさせ(最近は座って食べてくれるようになった)、利用者が増えたのでオジキ以外にも食後の「口腔ケア」を見なければいけなくなったので、以前はしなかった「薬の仕込み」を食事の最中にして、薬が利いてきた頃に寝床を作り、眠らせて布団を掛けたら、さぁお昼寝タイム♪ いっちょあがり! という塩梅をここ4ヵ月くらい続いていて、完全にオジキを意のままにしているキブンでいて、まぁ要は調子に乗ってたんです。
それが最近、奇しくもマニュアルを作成している職員から「それはやっちゃいけないよ」と言われ、ハッと我に帰りました。
何をやってるんだ。。氣を遣いまくってきたオジキに対して感情面でもマニュアル化の対処をしてどうすんのか、したところでお前は本当は何がしたかったのか、と。
「介護職員ありきの介護業務のマニュアル化」は、もちろん利用者のためにあらず。そういった視点で見てみると、こちらがマニュアル化しているのを、彼が氣を遣われて見透かしていて、「あ、メシ喰ったから次は寝るのね。ま、いつものパタンか…」と思われているようでいて、さらに従うことで、なおさら気を遣わせているんではないだろうかと思えてくる。そこまではないにしても、「…ち、おもしろくねぇな! …でも、まぁ、食べさせてくれるし、しょうがねぇかなぁ」という心持ちで寝ているフリをされているのかもしれません。
というわけで、奇しくも自分のマニュアル化嫌いを、なんと利用者に強いている状況を客観的に見られる良い機会ができたので、今後はまた初心に戻って手探りな状態を楽しもうと思います。
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19 Feb 2010 「盆踊りガールズ」結成☆
休日には朝ヨガに加えてダンス(主に「ダンスの基礎」となるバレエのバー・レッスン)を習っているので、先週のレクリエーション「朝ヨガ」に「バレエ」を加えてみました。かけるCDはヨガのときのThe KLF『Chill Out』やブライアン・イーノ『Music For Airports』などのアンビエント系から一転して、ドべたな『乙女の祈り』(レクリエーションへの導入剤に成り得る音楽は重要)。
まぁ、音楽だけでもソレっぽくしたいなぁというのもありまして。。というのも、ヨガのときはソファに座ったままの上半身のみの軽い運動でも疲れてしまうご高齢な方々なので、ちょっとやってみるまでどう転ぶかわからなかったんです。
したらまぁ! この利用者さんがすごかった! もともとこのエントリにもあるように盆踊りはめちゃうまだったんですが、バレエも1回目にしてプリエ(屈み)とルルベ(伸び)を難なくこなしてくれました。ちなみにヨガのときのバランス感覚も随一。他にも筋の良い利用者さんもいたのですが、やはりピカイチ。しかも誰が見ても美人なので華がある。
これでピン! ときました。朝ヨガ・バレエの他に「盆踊り」を加えて三本柱にしてレク時間を充実させ、さらに「地域の盆踊り大会で踊る!」という地域交流的な目標を掲げることにしました! これから夏に向けて練習あるのみです。週1でも毎週やったらけっこう見ものな踊りになるのでは!? もしかしたら弊社サイトにUPできるかもしれないので、楽しみにしててくださいね♪
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09 Feb 2010 素晴らしい利用者は少数派に転ずる社会
たまにショートステイ(短期宿泊サービス)に来られる齢八十くらいの女性利用者がいます。彼女は要介護度も低く認知症ではないのもありますが、ものすごくシッカリしている。薬の準備は職員に聞かなくても自分で管理できるし、ましてや薬を飲んだことを忘れない(飲んで30秒で忘れる方も少なくない)。また持参してきた/してきていない物を忘れない用意周到さでもって、ましてや物盗られ妄想にも駆られない。さらに大人しい性格なのですが、言うべきことはキチンと言い、でもガッチガチに頑固でもなく…というある意味、素晴らしい利用者といえます。
ある日、就寝時間より少し早めの時刻に未だ就寝されていなかったのはシッカリ者の彼女ひとりだったので、もう着替えてもいいだろう、と踏んで私服に着替え終えていた後に、彼女の排泄介助がありました。その際も「もう着替えてしまったのに申し訳ないね」という含みを込められた「赤い帽子が似合うわね」というお世辞を戴きました。その後には「今頃(着替えるなんて)珍しいわね」とも。そう、もう眠るのはシッカリしている彼女ひとりだから着替えても大丈夫だろうという「抜け駆け」を彼女は見抜いていたのです。驚くべきはたまに来る彼女なのに「就寝時間を覚えていて、でもそれよりもなぜか少し早く着替えている僕」を認知できていたのです。その時は一瞬、「まだまだ着替えるには早いわよ」という無言のお説教が聞こえたようでした。
また某利用者がお金のことでいつものようにギャンギャンうるさいときには、「なんであのひとはいつも怒っているのかしら。ニコニコしてれば幸せがやってくるのにねぇ」とボソっとこぼされました。確かに彼女はいつもニコニコしている。時に、そのニコニコ顔って、もしかして無表情なのかな? と思えるくらいに。
一方、他の利用者はというと、お金や物品を盗られたと言いがかりを付けた挙句にわめき散らし、日中働いている夫の職場に「ブラジル渡航」(妄想です…)の件で泣きながら電話をされたり、職員をボコボコに殴ったり蹴ったりつねったりツバを吐きかけたり、施設からの脱走を試みようとして近所に大声を張り上げたり、……されています。そして、おそらくニコニコと無難に生きてきたシッカリ者の彼女には全く意味不明なことばかりが繰り広げられていると思われますが、さすが優等生的な彼女はどんな状況でもニコニコしています。
大局的に考えてみれば、他とは異なる異物的な行いをする他者を非難・排斥する今の世の中では誰でも優等生的にならなるを得なく、またそういう行いを強いてくる社会なので優等生的な彼女のような存在は世間的にいえば大勢です。しかし、認知症を主にしたデイサービス施設に来られる高齢者の中ではマイノリティであり、ましてや(僕が勝手に提唱する)「年老いればヨゴレるのが当然、人生も然り」の意で言えば、一般高齢者の中でも少数派なのではないか。
こういったシッカリとソツなく生きてきた者が嫌が応にも少数派に転じてしまう超高齢者社会に向け、今の政治や社会が為すべきことは無駄を一切省く事業仕分け的なものではないのではないか。ましてや仮に、社会・世間的に優等生を強いられ生きてきて高齢になり突然、ボケたら、それこそそのギャップに苦しむのは当人と家族であり、それをモノは言いようで「自己責任」の名でバッサリと切り落とされる前に、我々は今の社会・政治に関して、より懐疑的になる必要があるのは言うまでも無い。
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05 Feb 2010 オジキの歯ブラシ
先日、例のオジキの連絡帳に大奥から、
「いつも歯磨きありがとう! こないだ訪問歯科医に褒められました!」
というコメントをゲットしました◎
思えば、オジキの舎弟になって1年弱。
週に3日は格闘の末にも歯の裏側まで磨かせてもらってますので、
これは努力の結果という当然の報いとも思いますが、正直嬉しかったのです。
その記念としまして、オジキとの風呂場風景を再現してみましょう。
僕「お風呂のお湯加減、どうですか?」
オジキ「ええええええええぇぇぇ、みみみみみみみぃ」
僕「……いい、んですか?」
オジキ「……ぃい、ぃぃぃぃぃぃぃぃぃてててて!」
僕「……どこか痛いんですか?」
オジキ「ち、違うよぉ!」
僕「痛くないんですか? どっちなんですか?」
オジキ「ちーちちちちちちちぃ」
僕「血? 血が出てるんですか? それはウソでしょ。ホントですか?」
オジキ「ホントだよー! このぉ~、おれ! この、おれおれおれおれおれおれおれおれ!」
僕「あ、オジキが、ですか?」
オジキ「そうそうそう。そのぉ~、アレ、アレだろ?」
僕「……そうですね。例のアレです。例の綾瀬の件です。どうしましょう?」
オジキ「しらない」
僕「……ところで奥さんは元気ですか?」
オジキ「……へぇーへぇーへぇーへぇー、つーつーつくつくつくつくつくつく!」
僕「……そうですか。相変わらずいっしょに散歩はしてるんですか?」
オジキ「しないよぉ! しないしないしない。でぇ~、でぇ~、そぉ~、そくそくそくそくそそそそそそそ!」
僕「ソックス? あ、足を掻いてますね。かゆいんですか?」
オジキ「かいよぉー! かー! かいかいかいかいかいかいかいかい!」
僕「かいーの?」
オジキ「かいーのぉ!」
僕「さっき、うんこ漏らしてましたもんね」
オジキ「……」
僕「明らかに、うんこ漏らしてましたよ」
オジキ「なぁ、そだろう?」
僕「そうです。うんこ、です」
オジキ「なーなーなー、なななな、なんなんなんなんなんなん」
僕「……じゃあ、湯冷めしちゃうんで、そろそろ歯を磨きましょうか(おもむろに歯ブラシをオジキの口に入れる)」
オジキ「……んーんーんー」
僕「いいですよー。そのままそのまま。いい! いい!(オジキの手を握りながら歯磨き中)」
オジキ「……んーんー(口から歯ブラシを放してしまう)、……んおぉぉぉ! ぁや! 野郎! 馬鹿野郎!! こんちくしょうー!!!」
僕「(再び口に歯ブラシを放り込む)そうそうそう! いいですよ!」
オジキ「ふがふがふふぁ。ふぉーふぉーふぉー!」
僕「いいですねー。じゃ、こんどは歯の裏側、いきまーす!」
オジキ「(口に歯ブラシを入れたまま目線の先にあった水道の蛇口に鉄拳をかます)おら! おら! おいおいおい! よぉー! よぉ! よぉ?」
僕「(再び口に歯ブラシ)そうっすよね! この蛇口の奴、むかつきますよね! そうそう! いいですよー!」
オジキ「ほうだろぉ~!(おそらく「そうだろう?」の意)」
僕「そうなんです。シメちゃってくださいよ。なんて蛇口だけに! そーそー! いいですよー!(歯の奥歯までくまなくブラッシング中)」
オジキ「……うーうーうー(こういう駄洒落には厳しい「間」を大切にする、お笑い好きなオジキ)」
僕「この蛇口、むかつきますよね! いいっすよー!(歯磨きの最後の仕上げ)」
オジキ「……(「蛇口の件はもういい」とばかりに無口に)」
というような、涅槃と覚醒の間を行き来する歯磨きの情景は前述した僕の拙い文章力では伝えきれませんでした。。
ま、オジキの間寛平好きが伝えられたらいいっス!
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