Monthly Archives: December 2009

23 Dec 2009    夢を諦める勇気

xmas 間近の渋谷の街を歩いていたら例年の xmas song が全く聴こえない有様で、忘年会シーズンでもあるのに居酒屋の客引きも腰が引けている、そんな喧騒の街を代表する渋谷であった。
日本が上っ面調子に浮かれまくっていた時期があったと聞くが、その残り香だけを、めめっちく吸い込んで夢見心地で成人した頃には、一気に梯子を外された感のある1976年生まれの僕は、そういう時代に生まれていたら即抹殺されていたと思う暗いやつなので(「根暗」とは明らかに違い、根暗のひとはもっとしんどいかも)、こういった雰囲気は嫌いではなく、むしろ好きなのだが、ついでに言うなら調子の良い日本人には、おそらくHappy New Year!! のドンちゃん騒ぎも無いであろう今年の年末から2010年の正月にかけては、静かなる内省の時を、さらに味わうための良いチャンスだと、お世話様ながらも思った。
渋谷には映画『アンヴィル』を観に行ってきた。50代のメタルおやじたちがロック・スターの夢を捨てきれずに(おそらく死ぬまで)夢へと邁進する「永遠なる青春活劇」で、まさしく副題の邦題が「~夢を諦めきれない男たち~」。観る前から「夢を諦めないことはいいこと!」「いくつになっても輝いているオヤジは少年みたいでかっこいい!」といった感想が大いに予想されたが、観終わってみたら「やはり、これは『映画』だ」という感想であった。
というのは、前述のように浮かれている場合ではなく怒りを通り越してやり場の無くなったこの日常においては「ポジティブ・シンキング」が流行となった感もある昨今で、このようなドキュメンタリー映画がスマッシュ・ヒットし、ロングランになることはブームゆえの自然な成り行きであり、しかし忘れてはならないのは「この映画は非日常を描いたからこそ、映画になっている」という当然の事実なのである。(もちろん、それがドキュメンタリー映画であっても)
アンヴィルはボン・ジョヴィとフロントアクトながらツアーをしたこともある過去もあり、一時でも成功を収めたバンドでもある。その成功者だからこそ、映画が成り立っている事実もあり、またそれは全世界的にダークな時だからこそ、映画に成り得た良材でもあったのだ。売れないメタル・バンドでも夢への成功を齢50にもなって諦めないでいる姿は夢追い人にとって輝きの存在に映るかもしれない。さらにアンヴィルのドラマーは言う。「ロック・スターになるために週末にノーギャラのツアーに出て、またshit(クソ) な日常に戻るのさ」と。しかし、これは成功を収めた者にしか言えない言葉である。成功を収めずに夢を諦めた大半の者たちは、そのshit な日常を嫌が応にも一途に生きていかなければならない現実があるのは言わずもがなである。
個人的には、アンヴィルには齢50にしていよいよバンドを諦めて、しかしそのshit な日常で、ささやかながらも次なる夢を成し遂げて成功する映画を観たかったが、それでは映画にならないので永遠に観られないことになる。。
…そうか!
それは観衆である我々がすることであったのか! という諧謔に笑った。
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18 Dec 2009    クズが無い

先日、新規の利用者さんが初来所されました。
なにやらご本人はベラベラの東北訛りでもって上機嫌なのだけど、
なにかを察した職員たちを不穏にさせるオーラ出まくりの彼でもあり、
優しく例えるならば、
「来所前にひっかけてきたランチでワインをちょっと呑み過ぎたかな?」
という按配でもって来所して10分後、
寝癖が酷い白髪混じりの頭を掻きむしり、
「なにすっがなぁw」(「w」はいつも半笑いの意)、
と言い出すや否や、皆の前でいきなり民謡(曲名不明)を謡い始めました。。
これにはいつも新参者には辛口の利用者さんも面喰ったようで、
また職員も唖然、というか引いてしまい、
しかしご本人はまんざらでもない様子、というか「してやったり」といった感あり?
他に、他利用者さんの食事の邪魔をしたり(といっても可愛いもんですが)、
徘徊癖のある彼なのですが、なぜか「ティッシュの箱」を持ちながら歩きまくります。
徘徊癖のある利用者さんは大概外に出たがるので、彼も御多分に洩れず玄関へ行きましたが、
しかし出ようにも外からも鍵がかかっているので出られなくなった彼は、
「クズがないとなぁw」
とつぶやいていたので、
ひょっとしたら「おがくず」のこと? 東北では「クズ」と言うのかな? と推測。
また、前職は大工さん?
ティッシュの箱はクズを入れるため?
などと勝手に推測。
午後には、「アクティビティ」という足腰などのための機能訓練を兼ねた買物や散歩があるのですが、
歩きまくる彼なので連れて行こうということになり、お誘いしたら、
「そうなぁw じゃあクズ探そかwww」とのこと。
おがくずは大工職人には必須アイテムなのかな? とも思い、
「そうですよね。クズがないと何も始まりませんよ! 行きましょう!!」と初日の様子見と、
正直もう少し大人しくしてもらいたかったのもあり、
いざ、近所の公園までドライブ。
平日の夕方の公園は、まばらながら犬の散歩をする者あり、
鳩に餌をあげる者ありで、平和以外何物もないといった様相を呈していましたが、
そこになぜか施設から「ティッシュ箱を持った彼」が現れた瞬間、
公園全体が不穏な空気に包まれ、ますます曇る空になった気がしたのは僕だけでしょうか。。
職員と他利用者さん含め7人ほどで、その公園に散歩に行ったのですが、
5日くらい前に来たその公園では、桜がなぜか咲くような暖かい陽気だったにも関わらず、
今日はますます曇ってきた上に、今年一番の極寒の気候ということで、15分で退散することに。
利用者さんからも「寒いから…もう帰りましょうよ」という言葉もあり、
彼は彼で「クズが無いんだよなぁwww」ということで、そそくさと施設へ帰ってきました。
施設に着いた彼は玄関で靴を脱ぐと、
「あ、こげなとこにクズあっだよ!www」とのこと(未だ半笑い)。
ん???
「クズ」って「靴」のことだったの?
でもそれ、さっきまでずっと履いてたよね。。あなた。。
「ティッシュ箱」を持つ意味は未だ分からず終いのままで、
しかしながら、いつも新規利用者さんにはミステリアスな意味で期待してしまいます。
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04 Dec 2009    隣からの晩御飯

食事をあまり採らない利用者さまには「野菜ばかり残してダメじゃない! 全部食べて!」「一転集中じゃなくバランス良く食べてね!」などと、
注意を促すときなどは、なんだか小学生の先生になった気分でもあり、正直まんざらでもありません。
しかし、某さんは頑固一徹、齢八十弱のお婆ちゃんなので、
野菜を残すだけならまだしも小鉢、否、丸々一膳ごと残す日も多々あります。
比較的痩せている彼女なので、ちょっと心配になり「骨と皮だけになっちゃうよ!」と実際のところを注意しても、
「頑固だけど遠慮がち」な「認知症パーソナリティ」が出ているのか、
「もうお腹いっぱいで入らないのよ~」「まだ手を付けてないからあなた食べてくれる?」などと、
勝手に食事を終わらせてしまいます。
タイミングと彼女の気分などが良ければ、執拗な催促の挙句に食べてもらえますが、
なかなかそうはいかないときがほとんどで、
「せっかく職員が作ったんだから食べてよ~」「もったいないと思わないの?」「『もったいないお化け』って知ってる?」などと、
恩着せがましく促しても、なにがなんでも食べてくれないときがほとんどで、
また当然、食事の時間の都合もあり、僕らは台所の三角コーナーを指差し、
「じゃあ、食べないなら捨ててきてくれる?」
と促します。
これは「捨てる=もったいない」という事実を刷り込ませるために三角コーナーに誘導するのですが、
自分が残したことを棚に上げ、「もったいないね~」と独り言を呟きながらも徹底して拒む彼女。。
さらに最後の最後に、南アフリカの難民の子どもたちがどれだけ飢餓で死んでいようと説明しても、
どっさりと自分の残した食べ物を捨て切る彼女でもあります。
そんな彼女が「食事を採らない言い訳」として最近顕著なのが、
「お隣さんがおにぎりを握って来てくれて窓越しで食べさせてもらった」
というものです。。
しかも、そのときは本当に箸一膳、手を付けないで残す絶食ぶり。
「無差別的隣人殺人事件」が平然と起こりうる殺伐としたこの現代日本において、
上記のような妄想を平然と言えるのは牧歌的な話でもあるのですが、
そういった牧歌的原体験が無い現代人の僕らには、
そう思い込む彼女の、まさしく牧歌的な過去を想うことしか術は無い。
しかし、その報酬として、現代人の僕らにはダイエットに活用できるかもしれません。
お腹が減ったときには「お隣さんがおにぎりを握って来てくれた」と…。
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