前回約半年ぶりの投稿から、またまた約8ヵ月も経ってしまった…。
さてさて、わたくしめはと言いますと…、
まだなんとかかんとか介護で喰ってます。。
今回も、そんな介護の現場でのひとコマです。
某さんは、つい10年くらい前まで歯科医でした。
そう、歯医者さんです。
彼は齢八十を超え、認知症なのですが、
まだまだクリアなところもあります。
記憶もハッキリしていることが多く、
た~まにおっしゃることが繰り返しになるけれど、
やっぱり“先生”の会話はおもしろい。
「先生はなんで歯医者さんになろうとしたんですか?」
「ん? 友だちの付き合いでね、願書を出してみたんだ。
自転車に乗って一緒にくっ付いて行って、テストを受けて。そしたら受かっちゃってね」
「すごいですね! 勉強できたんですね」
「でも身体を動かすのも好きでね。むかしは競輪の選手だったんだよ」
「……!? 先生は歯医者さんじゃ?(ここで「さては認知症状では?」と勘ぐりました)」
「生活費を稼ぐためにね、(歯医者さんの)学校に行きながら、競輪選手もやってたんだ」
「へー! (認知ゆえの妄言ではないと判明)だから、
いつも大きな元気のいい声を出されて体操に参加されるんですね。先生はスポーツマンですね!」
「自衛隊にもいたもんでね」
「えっ!?」
「病院でカルテってあるでしょ。あれ、書くのめんどくさくてね。
それで自衛隊で軍医っていうのがあるっていんで、入ったみたの。
そしたら居心地良くってね。10年くらいいたかな」
「め、めんどくさくて、ですか…」
ってな塩梅で、いきあたりばったりな感じでも、
なんだか彼なりの強くブレない芯みたいなものが見え隠れしておもしろい。
そんな彼は医師ゆえに(?)自ら「摘便(てきべん)」します。
摘便とは、腸内に溜まっている便を指などで掻き出すことですが、
彼はトイレに入るとおもむろに自らの右手指で肛門を刺激し始めます。
介護職員にとって、摘便は医療行為に当たるのでやってはいけないで、
摘便の処置が必要なときは看護師さんにお願いします。
彼の場合は元医師ということで自らがされますが、
他利用者さんとの共同生活での衛生面のこともありますので、
「先生、摘便されるときは手袋をお貸ししますので言ってくださいね」
と声かけすると、
「あ、うん…。じゃあ、今日はやめとくかな」
と言いながらも、トイレの隙間から様子を伺っていると、
なにやらもぞもぞと指で弄っているようです。
……しょうがないなぁと思い、トイレから出た先生に、
「では、指をキチンと洗いましょうね」
と促したなら、
「…あのね、ボクはうんこを汚いなんて、思ってもいないんだ」
とおっしゃいます。
「なんだか友だちみたいな感覚でね…」
問わず語りで独りごちすると、先生はそのまましぶしぶと指に石鹸を付け、
「うちの親父が百姓でね。肥溜めがうちの畑にあって、
うんこは良い肥料になるもんだから、うんこを見るとうれしくなるんだ」
「そうなんですか…」
「ふと見たら家の肥溜めからうんこがなくなってることもあるくらい、
むかしはうんこは貴重なもんだったんだ」
少し哀しそうに遠くを見、指を洗いながらおっしゃいます。
うんこは友だち。
いい言葉ですね。
